筆者が実際に体験した中学受験の総合スケジュールを解説します。
中学受験は、高校受験や大学受験のような多くの受験生が経験する受験とは異なるため、経験したことのない親御さんは不安になっていると思います。
中学受験に挑戦しようとしている方は、子どもの小学生時代の大切な時間を消費すること、ご家庭の金銭的な負担は覚悟してください。それでも挑戦する方は、しっかり計画を立てて、親子とも満足度の高い中学受験にしていきましょう。筆者の体験から、おすすめの習い事、塾に関すること、学校見学会・入試説明会、受験時の注意点など経験をして得た情報をお伝えします。
親御さんは下記に説明する内容をよく把握して、万全な状態で受験ができるように子どもにとって最高のサポーターになりましょう。
目次
①年長~
基礎学力の確立: この時期は、子供が楽しみながら学ぶことが重要です。絵本の読み聞かせや簡単な算数ゲームなどを通じて、楽しく学習習慣を身につけさせましょう。
興味・関心の幅を広げる: 音楽、スポーツ、アートなど、様々な習い事を通じて、子供の好奇心を刺激します。これらの活動は、社会性や協調性を育むのにも役立ちます。
「そろばん」がおすすめ: このころの習い事で中学受験に役に立つのは「そろばん」です。小学校3年生まで続けて暗算検定で2級~準2級が取得できるように計画をたてましょう。そろばんにより期待される効果は以下の通りです。
・計算速度の飛躍的向上: 暗算検定2級~準2級のレベルに達すると、2桁×2桁、3桁×1桁などの一般的な計算が迅速に行えるようになります。これは、中学受験の算数で時間との戦いになる長い計算問題や、複数ステップにわたる問題を計算する際に大きなアドバンテージとなります。
・集中力と記憶力の強化: 暗算を行うには高い集中力が必要です。この訓練を通じて、長時間の試験や勉強に集中する能力が向上します。数字や計算過程を頭の中で追いかけることで、作業記憶(短期記憶)の能力が高まります。これは学習全般にわたって役立つスキルです。
・自信の構築: 暗算検定2級~準2級の取得は、子供自身の学習に対する自尊心を大きく高めます。難易度の高い目標を達成した経験は、受験勉強などの困難に直面した際の心理的な支えとなります。
・数学的思考力の向上: 高度な暗算能力は、数字の概念や法則を理解し、応用する能力を支えます。算数・数学だけでなく、理科の実験データの解析など、他の科目への応用も見込めます。
算数を制する者は受験を制する!?
2024年に実施されたある中学校の入試結果をヒストグラムにしました。
算数だけは、受験者の点数が一桁から100点まで幅広い得点分布になっています。100点満点は算数のみ。要するに算数が他の受験者との点数の差を広げやすいのです。よって、幼少期や小学校低学年では算数(数字)に苦手意識を持たないようにさせてください。逆に算数を得意にすることができれば難関校にも挑戦できます。
②小学校受験
小学校受験は中学受験よりも独特の世界です。毎年10~11月にかけて実施されます。ここでは小学校受験のことは詳しく書きませんが、下記の内容に対応する必要があります。
- 親子の面接がある
- 願書が必要
- 誕生月(生まれ月)による調整
小学校受験ではほぼすべての学校で、親子面接やお子さまへのお話しがあると思ってください。子どもだけで行う面談もありますので、もし子どもが人見知りや内気の性格であれば人気校に合格するのはかなり難しいでしょう。親子面接であれば子どもが内気な性格であることをフォローできますが、子どもだけで行われる面談だった場合は子どもが一言も話さなかったなどよくあることです。親としては気が気ではないですよね。
そこで小学校受験は情報が中学受験よりも乏しく独特の世界なので、プロの幼児教室を利用しましょう。願書に学校の理念への共感や子どもの具体的な長所短所をしっかり記入するようにアドバイスしてくれるでしょう。小学校受験で必須の面接の練習や願書の添削もサポートしてもらえます。将来の中学受験を見据えて小学生低学年の学習までサポートしてくれる塾もおすすめです。
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小学校受験のもう一つの特徴は、誕生月(生まれ月)によって試験調整や加点のある場合があります。4月生まれと3月生まれでは、1年の差があるため心身ともに差があります。この差は中学受験でも如実に結果として現れます。実際に2002~2005年の灘中学校受験者と合格者を誕生月で集計した結果を表にまとめました。
誕生月 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率% |
4~6月生まれ | 597 | 197 | 33 |
7~9月生まれ | 490 | 157 | 32 |
10~12月生まれ | 388 | 111 | 29 |
1~3月生まれ | 290 | 76 | 26 |
4~6月生まれの合格率が最も高く、早生まれの1~3月の合格率が最も低い結果となりました。さらに、合格率だけでなく、受験者数も早生まれより4~6月生まれが2倍多くなっています。
この誕生月の影響は、勉強だけではなく運動にもあてはまります。一例ですが、プロ野球選手の誕生月は4~6月生まれが最も多く、最も少ないのは早生まれの1~3月です。これは間違いのない事実です。
中学受験においては誕生月による試験の調整や加点などはありません。この早生まれの子どもを持つ親御さんに対策をアドバイスするなら一つです。その対策とは以下の文章中に記載しています。
③小学1年生~小学2年生
小学校低学年の間に、前述のそろばんや小学校の宿題で勉強を習慣化させながら、さまざまなことを体験させましょう。星を見に行ったり、植物を育てたり、虫捕りしたり、料理をしたり身近なものが中学受験で出題されます。小学5年生にもなるとそのような時間はありません。この時期に様々なことを体験させましょう。
大手の塾に通わせることを考えている方は、一般的には小学3年生の2月から塾をスタートさせるのですが、おすすめは小学2年生の終わりから小学3年生の始めくらいに大手の塾の上位クラスに入塾することです。多くの方が小学3年生の2月から入塾するので、入塾テストの結果によっては上位クラスを希望できない場合もあります。したがって、上位クラスに入りやすい小学2年生の終わりから小学3年生の始めくらいの入塾をおすすめします。
入塾にはテストがありますが、幼児教室や通信教育、タブレット学習など普段から学習していれば特に問題はないでしょう。住んでいる地域やお子さまの状況に合わせてうまくご利用ください。
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さらに余力があるなら、英語がおすすめです。受験する中学校にもよりますが、英語での受験や、英検取得で加点する学校もあります。何より語学は小さいうちから始めるのがもっとも抵抗が少ないです。
④小学3年生~
学習の本格化: 国語では読解力の基礎を、算数では四則演算や図形の基本を学びます。理科や社会では、身の回りの現象や歴史に興味を持つことから始めます。
時間管理の習慣化: 毎日の学習時間を決め、計画的に勉強する習慣をつけましょう。小学校高学年になると学習量が増えるため、この習慣が非常に重要になります。
学習塾の検討: 一般的には小学3年生の2月から塾をスタートさせます。おすすめは前述の通り小学2年生の終わりから小学3年生の始めくらいに大手の塾の上位クラスに入塾することです。
9歳の壁: 9歳の壁とは、子どもの認知的発達によって現れる自己認識です。わかりやすく説明すると、9歳頃になると脳が発達して、自分を客観的に判断できる(自分と他人を比較できる)ようになる成長です。劣等感や自尊心が学習に影響してきます。劣等感を抱くと今後の学習にかなり影響します。もう一度いいます。この認知的発達が今後の学習にかなり影響します。しかし、逆に自尊心を高めることが早生まれの対策にもつながるのです。学習面での自尊心の高め方は簡単で、通っている小学校の成績を上げましょう。通っている小学校で行われるテストの対策をしっかりして、高得点を取らせてあげてください。何も言わずとも自ら他者との比較をします。算数はクラスで一番だったよ。漢字テストで100点取れたよ。私はみんなよりできるんだ!のかん違いは段違いの学習効果を発揮します。
⑤小学4年生~小学5年生
学習内容の深化: 算数では分数や小数の計算、比例・反比例など、より複雑な概念を学びます。国語では、文章の構成力や論理的な思考を養うために、作文や読解を強化します。文章量(文字数)は多くなりますので、別の記事で紹介している速読も試してみてください。
クラス落ちの覚悟: 進学塾に通っていると週単位で行われる学習理解度テストや公開テストによって、クラス編成が行われます。上位クラスから落ちてしまい動揺したり、親子ゲンカになったり大変ですよね。集団塾が合っている子、個別塾が合っている子、Web授業が向いている子、いろいろ迷いが出てきますね。でも子どもを信じてあげてください。テストで良い点が取れなかったときのダメ出しや、他の子との比較など絶対にやってはいけません。前述している9歳の壁をしっかり認識してください。
親は子どものサポーターです。喧嘩をしてもいいことはありませんよ。
基本は家庭学習: ほぼ毎日学習しなければ、上位クラスの方はライバルに負けクラス落ちするでしょう。塾の宿題も徐々に多くなり、家庭で学習する時間も量も増えていきます。自立がまだ難しい子どもにとっては勉強の仕方もわかっていませんので、家庭学習とスケジュールの管理など親のサポートが必要になります。共働きのご両親にとっては自分の時間は確実になくなります。覚悟しましょう。進学塾の宿題ではわからないことがあれば進学塾に質問に行くか、親がやり方を教えなければなりません。子どもの勉強をサポートするのが難しい場合は、家庭教師、個別塾、通信教育を利用しましょう。
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⑥学校見学・オープンスクール
親子で中学校のオープンスクールに参加し、学校の教育理念、学内の雰囲気や先生や生徒から話しを聞き、学校設備をチェックします。たまに在校生の催し物で演奏などもありますので子どもと楽しんで見学してください。その際に見るべきポイントと絶対に子どもに言ってはいけない一言を紹介します。
見るべきポイント: 私が実際に学校見学に行って見ておいた方がよいと感じたところをランキングで紹介します。
1位: 参加している親の質 |親の服装や態度で家庭環境は類推できます。自分の子どもの将来の友達になる可能性のある人たちです。
2位: 学校の雰囲気 |子どもに聞いてみるのが一番です。自分に合ってそうなど感覚で十分です。子どもや親の直感は結構正しいです。
3位: 学生と先生の距離感 |先生と在校生徒が交わす言葉や生徒の表情で、かしこまった関係なのか、友達みたいな関係なのか。
4位: 職員室の開放感 |困った時は相談しやすそうな環境が整っているのか。
5位: 大学合格(進学)実績 |学校によっては高校受験から入る生徒もいます。大学合格実績は現役生か卒業生なのかなど、数字の持つ意味をしっかり確認しましょう。大学付属校なら大学進学実績も。
6位: 入試制度 |国算理の3教科受験なのか、国算理社の4教科受験なのか、その他さまざまな入学試験方法を採用している学校が多いので、しっかり確認です。
7位: 駅周辺と通いやすさ |電車などの公共機関を使う場合は駅やその周辺と所要時間などは必須です。
8位: 学校設備のきれいさと充実度 |図書館、ICT教育関連、食堂、売店、トイレなど学校施設の充実度や清潔感など校内見学がある場合は確認しましょう。
9位: 授業カリキュラム |大学受験で塾が必要か。それとも学校である程度学習をサポートしてくれるのか。語学研修、ボランティア、企業タイアップなどの取り組みがされているのか。
番外: スポーツに力を入れたいなら部活やクラブ活動は必ずチェックしましょう。
絶対に子どもに言ってはいけない一言: 見学した学校の悪いところです。中学受験は一発勝負、来年再チャレンジできるわけではありません。ご縁のあった学校に行くのです。見学した学校は入学する可能性のある学校です。少し気になるところがあろうが、通うのは子どもです。通う前から子どもを嫌な気分にさせるのは絶対にしないでください。どの学校も良い部分はあります。そこをしっかり親子で共有しましょう。
⑦小学6年生~
受験の年: 中学受験をすること自体すごいことです。ただの人生の通過点、されど通過点。どのような結果になろうが頑張った経験は今後の将来に必ず活きます。このサイトも十分に利用してください。
テスト直しを大切にし苦手を克服: 得意を作るより苦手を作らないほうが重要です。国語と算数は多くの学校で受験科目ですので、必ず対策しましょう。国語の漢字や語句は確実に点が取れる部分、そして特に算数は前述した通り他の受験者と点数の差が広がりやすいので、算数が苦手であると受験者との差は広がるばかりです。算数の苦手意識は極力取り除くようにしてください。
知る→分かる→使う→できる→(他人に)教える: 物事を定着させるには、この順番で定着していきます。他人に教えるまでできれば、完全に定着しています。みなさんもそうですよね。他人に教えるためには自分が理解していないと教えることはできませんからね。子どもには「その問題どうやって解いたの?」「塾で習ったやり方を教えて!」などの声かけを通じて子どもがアウトプットしてこそ定着できます。
残り100日カウントダウンカレンダーを作る: 受験日までの日数を意識しましょう。塾にもカウントダウンカレンダーは貼ってあると思いますが、家庭では日めくり方式ではなく、連続式のカレンダーにしましょう。親子で同じカレンダーを共有するとやるべきことがみえてきます。カウントダウンが100日の理由は、100日前くらいから各学校でプレテストが始まりますので、受ける学校のプレテストのスケジュール管理にも役に立つからです。
第一志望校の決定: 進学塾では志望校別特訓のクラスが組まれ、過去問を中心に学習がスタートします。6年生1学期までには、第一志望校は決定しておきましょう。第一志望校は偏差値に合わせる必要はありません。子どもが行きたい学校、親が通わせたい学校など、親子で話し合ってしっかり目標校を決めてください。行きたい学校が決まるとその目標に向かって、子どもはがんばります。6年生で偏差値が伸びる子は自分で学校を決めた子です。できる限り子どもの意志を尊重してあげてください。
過去問は学校からのメッセージ: 志望校の過去問に取り掛かります。10月くらいまでは志望校の過去問をやってはならない謎ルールがあるみたいですが、私は関係ないと思います。志望校の過去問は早くやりすぎてその年の合格最低点にまったく届かなくて、自信を失うことにはならないようにだけお気をつけください。もし10月に志望校の過去問を本番と同じ時間とやり方で解いてみた際、その年の合格最低点から4教科受験で合計点が50点低い程度ならまったく問題ありません。残り数か月で点数はあがります。志望校の過去問にはその学校からのメッセージが含まれています。頻出問題や解法の記述、問題文の傾向など、過去5年分は必ずやりましょう。
メガネの子どもは予備メガネを準備: 受験当日は何が起こるかわかりません。突然メガネが壊れた。1日目午前試験の会場に忘れてきて、午後の試験に影響が出るなど、予備のメガネは持っておいた方が安心です。
女児は初潮(生理)に注意: この年代の女子は試験日前後で初潮になる可能性があります。普段から子どもに生理のことや対処法を伝え、また生理中の体調の変化をしっかり把握しておきましょう。頭痛や腹痛の場合に備えて、子ども用の解熱鎮痛薬は薬局でも購入可能ですので、試験日までに飲む機会があれば飲んで副作用など把握しておくのもよいでしょう。
⑧入試説明会
入試説明会: 実際にその学校に出向き、入試の形式(筆記試験、面接、小論文など)や選考方法などを把握します。入試に向けた注意事項などを説明してもらえるので、受験する可能性のある学校の入試説明会は必ず出席しましょう。どのような問題を出題するのかを説明してくれる学校もあります。学校によっては過去問の正答率まで教えてくれる学校もあります。試験会場の下見も重要です。近くに待機する場所はあるか、トイレの場所、電車のホーム、午後日程の学校への行き方、試験終了後の待ち合わせ場所、自宅までの経路、忘れ物をしたときに文具など調達できる店、できるだけリスクを想定して可能な限り周辺を下見しておきましょう。
入試日程表を作成する: 下記の内容を全て記入した入試日程表を作ってください。出願のミスなど絶対に許されません。下の画像に作成例を載せています。ご参考までに。
・学校名 |受ける可能性のある学校はリストアップ
・試験日程日時 |学校によっては複数回受験可能です。日にちだけでなく試験時間も全て書き出しましょう。
・日程ごとの受験科目 |国算2教科、国算理3教科、4教科なのかを正確に把握するためです。
・日程ごとの偏差値 |数日ある試験日程を組むときに参考にします。
・前年度の倍率 |数日ある試験日程を組むときに参考にします。
・出願日 |出願受付日から締切日と時間まで正確に書き出します。
・試験会場 |試験会場を把握するため。
・当日の持ち物 |シャーペンなのか鉛筆なのか、コンパスや定規がいるのか、上履きなど。
・試験日 |試験日時
・結果発表日 |ほとんどの学校がWebで発表
・手続きあり・なし |一部の学校では合格者は発表日に書類を学校まで受け取りに行く必要あります。
・入学金振込日時 |振込日時は重要です。合格を水の泡にしないように。
⑨入学試験
直前期の対策: 精神的なプレッシャーが増大するこの期間は、健康管理にも気をつけながら、総復習と苦手分野の集中的な克服に努めます。リラックスできる趣味や運動を取り入れるのも良いでしょう。
試験の準備: 必要な文房具や受験票、時計などを前日に準備し、当日は余裕をもって試験会場に向かいます。試験中は冷静に、時間管理を意識しながら問題に取り組みます。
合否の子どもへの通知: 試験は数日続きます。その間にも受験した学校から届く合否。どのように扱うのかを事前に決めておきましょう。合格したらすぐに言うのか、不合格の場合は、子ども自身で合格発表を見るなど、子どもの性格を一番知る親だからできることもありますよね。
親だけは冷静に: 試験ですから何が起こるかわかりません。模試でA評価であっても、不合格になる場合もあります。
⑩入学手続き
入学に向けた手続き: 入学金の納付や制服の購入、教科書の注文など、入学に必要な手続きを進めます。また、新しい学校生活に向けての準備も始めます。
まとめ
ここで紹介したスケジュールとリストを参考に、中学受験に向けた準備を進めていきましょう。計画的に取り組むことで、子どもも親も安心して受験に臨めるでしょう。各ご家庭に一番合った方法を選択していただき、親子で中学受験を乗り越えましょう。
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